S.P.E Sports Entertainment
  • TOP
  • >
  • NEWS
  • >
  • 「鈴木健氏による見所解説」5.10 DNA.33 後楽園ホール大会 〜全試合編〜

NEWS

2017.05.06FIGHTING GIG DNA

「鈴木健氏による見所解説」
5.10 DNA.33 後楽園ホール大会 
〜全試合編〜

FIGHTING GIG DNA EP.33 〜Kill the King〜
■日時:2017.5.10 (水) 開場 / 18:15 開始 / 19:00
■会場:東京・後楽園ホール


いびつな感情のぶつかり合いの果てに
「俺たちの勝負」の答えは見られるか

1、遺恨決着!! サラブレッドvs狂犬
LEONAvs渡瀬瑞基

DNA初進出後楽園大会のオープニングにふさわしい単純明快な意地の張り合いが期待できる一戦。新体制一発目からLEONAは継続参戦し、常に渡瀬とお互いの存在を意識し合ってきた。いや、意識というようなきれいな形ではなく、もっといびつな感情と言うべきか。

本来ならば、似たような境遇のもと通じ合ってしかるべき2人だったのだろう。渡瀬とLEONAに共通するのは“レッテル”。飛龍二世としてこの道を選んだ時点で偉大なる父と比較される宿命を背負った藤波辰爾の息子と、芸人との二足の草鞋を履くがゆえ常に「あいつは本気でプロレスをやる気があるのか」という根拠なき偏見の目を向けられた者。

なんらかの形で満たされていればお互いを受け入れる気持ちの余裕もあっただろうが、見返したいという思いが増幅しまくるタイミングで出逢った今、世の中でもっとも負けたくない相手に位置づけられるのは必然だった。4・21新宿FACE大会、3度目の対戦にして勝負がつく。

ただし、最後はLEONAの足4の字固めでレフェリーストップ。ギブアップの意思表示をしていないにもかかわらず試合を止められた渡瀬はレフェリーに「勝手に止めないでくれよ!」と食ってかかり、むせび泣きした。

レフェリーの判断は絶対だから、その態度を潔しとしなかった観客もいただろう。だが、そのあとに言った「俺たちの勝負じゃねえかよ…」のセリフが不意に心へと突き刺さった。

いびつな感情で殴り合いながら、それを他者に邪魔されたくないという思いも強い。試合そっちのけで場外乱闘を繰り広げたり、パートナーの存在を忘れて飛びかかったりと見た目はぐちゃぐちゃドロドロしたものであっても、LEONAと向き合っている時間はこれまでのキャリアの中で経験していないものだった。ザックリと言い表すなら、それが芸の道と並行してでもやりたいと思っていた渡瀬なりの“プロレス”の形なのだろう。

ドラディション4・20後楽園大会でLEONAは、クセ者として定評がある新井健一郎の術中に引きずり込まれることなく、ドラゴン殺法の逆さ押さえ込みで逆転勝利をあげた。以前ならばキャリアで上回る相手にほんろうされ苦汁を舐めて終わっていたのが、その先を考えて対処するいい意味でのあざとさが養われてきた。

一度敗れている側がより感情的になるのは火を見るより明らか。赤い炎の方が煌々として激しく映るが、青い炎の方がじつは温度が高い。渡瀬とLEONAの決着戦は、そんな図式がイメージされる。「俺たちの勝負」の果てに両者の胸中へ芽生える答えは、どんな形のものなのか。


不満爆発の吉村はポセイドン撃沈宣言
“いつどこ権”を持った島谷の逆境っぷり

2、第1回DNA春のキャラ祭り
岡林裕二&下村大樹&島谷常寛vsロイズ・アイザックス&レッカ&吉村直巳

“第1回”と銘打たれているということは、今後も春のキャラ祭りは継続されるのだろうか…そんな突っ込みはさておき、このカードに関しては吉村の膨張しまくった不満に尽きるだろう。メインはともかくとして、少なくともセミあたりでもっと注目されるべきカードが組まれると踏んでいたはずである。

新体制前から怪童ぶりをいかんなく発揮し横綱・曙に喧嘩を売ったあとも、尻すぼみするどころかむしろそのふてぶてしさが日増しに増長。今ではDNAの中で群れない・媚びない・結婚しないと一人DAMNATION状態(3つめはこじつけ)。それを思えば、本人ならずともこの位置はもったいないという感がする。

当然ながら、会見でもそのあたりの不満をブチまけた。現在、横綱は体調不良によりリングを離れているが「なんで曙は出ないの?」とその場でニラみを効かせ、返す刀で岡林を「しょせん曙の代わり」と一刀両断。大日本プロレスではストロングBJの旗手として暴れる一方、真冬や真夏に大量の水をぶちまけながら闘うポセイドンマッチでも海の神を超越し水全体を司る水の神様に幅を広げたポセイドン様として降臨している案件を、しっかりと把握していた。

その上で「ポセイドンと呼ばれているか知らんけど、おまえを沈めたるからな」と宣戦布告するあたり、なかなか頓知も効いている。これはカール・ゴッチに対し「仏にしてやる!」と暴言を吐いたり、ルー・テーズを「スクラップにしてやる!」と挑発したりするのと同じぐらいにポイントが高い。

なので、第2試合といってもセミ・メインに匹敵するほどの注目すべき激突がこの6人タッグ戦には内包されている。新体制一発目のメインでほとんど息を合わせようとせず一人で曙&樋口に向かっていった吉村のじゃじゃ馬っぷりに手を焼いた岡林だけに、直接肌を合わせることでわからせようとするに違いない。

そんな中、DDTの“いつでもどこでも挑戦権”を保持している島谷は、吉村を含む3人から集中的に狙われる悲惨なシチュエーションが予想される。このいつどこ権とは、DDTの最高峰であるKO-D無差別級王座へいつでもどこでも好きな時にチャレンジできるという便利なものなのだが、通常の試合でも敗れた場合はベルトと同様、勝者へ移動する。

いろいろあって島谷はこれを手にしてしまい、5月5日の時点で行使していない。たぶん、いつどこ権を保持した経験がないのでタイミングを計りかねているのだろう。いつでもどこでもなのだから、その日の試合を終えたチャンピオン(現王者は竹下幸之介)に襲いかかって行使すればいいのに、足を踏み出せぬうちに5月10日を迎えることになりそうだ。

つまり、この試合でいつどこ権が移動する可能性…鈴木大!というのが業界識者の一致した意見。吉村は会見で先輩の島谷をチビ扱いて強奪を宣言、チリに一時帰国し今大会には出られないワンチューロの分もと燃えるレッカ、さらには相手の腕をタイツと尻の間にはさんで骨折させるほどのケツ圧を誇るロイズまでもが虎視眈々といつどこ権を狙ってくるだろう。

今や逆境といえば鈴木大だが、今回に関しては島谷もなかなかの逆境っぷり。ちなみに、グランミリメーターズのリーダーでありパートナーである下村は、苦し紛れに「オレンジ頭!」と吉村へ毒づく島谷へ一切同調することなく「僕が目立って勝ちたいと思います」と語っていた。世の中、そういうものである。


逃げ切るよりも、玉砕よりも…
自分が培ってきたものを信じよ

3、目醒めろ、鈴木大~試練の七番勝負3rd Battle「NOAHの豪腕エース電撃参戦!!」の巻
潮崎豪vs鈴木大

さて、鈴木大である。七番勝負に全敗すれば本人の意思はスルーされ、強制的に引退させられる(ただし7分1本勝負で時間切れまで粘れば勝利を見なされる)という崖っ淵にもほどがあるに状況にありながら、初戦は佐藤耕平、2戦目は田中将斗相手に勝つどころか7分も持たず。

自身ものっぴきならぬ状況であるにもかかわらず、それでも鈴木のことを思い水差しアドバイザーとしての役割を務めている豊本明長さんからコスチュームと入場曲の変更をアドバイスされながら煮え切らぬ態度へ終始したように、どうも鈴木は性格的に後ろ向きすぎる。潮﨑戦に関してもこれまで同様「7分間耐え切ってなんとか引き分けに持ち込む」と意気込みというにはほど遠い内容の意気込みを口にしていた。

確かに後楽園ホールは新宿FACEと比べて広く、場外で時間を稼ぎやすい。それこそ残り10秒となったところで潮﨑を巻き込んでバルコニーまでいけばタイムアップまでにはリング内へ戻れず、めでたくドローに持ち込めるだろう。

だがこれまでも同じ姿勢でやった結果、7分間持たせることができなかった。真正面からぶつかっていくも身長、体重、キャリア、実績、人気、知名度、収入、運、女性経験とどれをとっても及ばぬ相手に、ただただ無策に弾き返される繰り返しなのだ。

そこで提案だが、今の鈴木がやるべきは逃げ切ることでも玉砕することでもない。プロレスラーとしての原点に戻るという、発想の転換である。

プロの門を叩いた者は、基礎体力をつけたあとに受け身を習い、そしてリストロックやハンマーロック、ヘッドロックといった基本的な技を叩き込まれる。おそらくだが、鈴木もそこは通過してきているはず。

これらはつなぎ技のように思われがちだが、どんなホールドも100%決まれば逃れられない。必殺技とは“必ず相手を殺る(やる)技”だからこそ必殺技なのだ。その昔、新日本の鬼軍曹として恐れられた山本小鉄さんは、プロレス入門書の中で「完ぺきに決まったヘッドロックは象に頭を踏みつけられたような痛さ」と解説していた。

これを読んだ時、子ども心に「小鉄さんは頭を象に踏まれた経験があるのか…」と思ったものだったが、プロレスの技とはどんなに基本的なものであっても本来はそれほどの痛みを人体に与え、ギブアップを獲れるものなのだ。それを思えば、やみくもに数だけエルボーを出すよりは、リストロックひとつをキッチリと決めにいった方が相手を倒す確率は比較的高いと思われるのだが、どうだろう。

もちろん、天下の潮﨑豪がリストロックやヘッドロックでギブアップすることは常識的に考えられないし、言うまでもなく100%の形で決めさせない技術も持っている。それでも自分自身がプロレス界で培ってきたものを信じなくして、いったい何を信じろというのか。

これまでの見方を変えたいと本気で思うなら、コスチュームよりも入場曲よりも、プロレスラーとしての姿勢であるはず。リストロックひとつ、ヘッドロックひとつにこだわり続け、脱出されても切り返されてもさらに決めようと向かっていく鈴木大。その結果、7分の間にギブアップを奪えなかったとしても、ただ逃げ回って時間を稼いだ引き分けより何倍も尊いものとして見る者の心を打つだろう。

このままでは切羽詰まった表情で入場→正面からぶつかる→はね返される→負ける→泣く→豊本さんが突っ込む→次回対戦相手におののく→以下ループ…のテンプレプロレスラーから脱却できぬまま引退に向かってランニングワイルドするのみとなってしまう。高木三四郎大社長も竹下幸之介も、そんな鈴木大が見たいのではない。今を信じて明日に輝くスターダムよろしく自分を信じて、明日に輝くのだ。

TAKAの飛び技を上回るか…MAOが
上書きする「あいつは宇宙人か!?」の追憶

4、宇宙人プランチャ対決
TAKAみちのくvsMAO

1994年4月16日に両国国技館にて開催された第1回スーパーJカップ。今よりも団体の垣根が高かった時代、獣神サンダー・ライガーが呼びかけジュニア戦士たちが結集し、ワンデートーナメントをおこなった。そこで名前をあげたのが当時、旗揚げ1年を経過したばかりだった東北のローカル団体・みちのくプロレス勢と、デスマッチ団体FMWのハヤブサ。今でも伝説として語り継がれる極上の大会だった。

当時、みちのくの若手にすぎなかったTAKAはリング上からトップロープへ駆け登り場外へ飛んでいくプランチャを見せる。それをモニターで見ていた長州力が「あいつは宇宙人化!?」と驚きの声をあげたことから、その技は「宇宙人プランチャ」と名づけられた(以上、ルチャペディアより引用)。

1997年生まれのMAOはその頃、まだ生を受けていなかった。ただ、みちのくの拠点である東北出身(宮城県大崎市)で、中学時代から自分たちのプロレスごっこをYouTubeにアップするような少年だったから、大なり小なりその影響を受けていると思われる。

2015年8月23日、MAOはスーパーJカップで若き日のTAKAが躍動した両国国技館にてデビュー。そのさいに宇宙人プランチャを繰り出した。それ以外にも空中技を得意とし、今では飛距離のあるファイアーバード・スプラッシュ「キャノンボール450°」をシグナチャームーブにまで磨きあげた。

昨年12・23仙台大会ではみちのく時代、TAKAとともに海援隊★DXとして暴れ回っていたディック東郷とシングルで対戦する機会を得た。レスリングマスターと誰の手も借りることなく1対1で闘い抜いたことにより、MAOは「怖いものがなくなりました」と語った。

同日デビューの渡瀬がLEONAという標的を見つけたのに対し、MAOは新体制後もこれといった好敵手を定められぬまま来ている。もちろんその中で自分を向上させていく姿勢は持ち続けていると思われるが、やはりそういう存在はいた方がいい。そのためにもベテランのTAKAに勝てば本心から自分がやりたいと思うことを形にするべく、主張ができる。

「見る側の予想を上回るのがプロレスをやる上でのモチベーション」と語るMAOだけに、このカードはまさにうってつけ。今年の新日本ジュニアの祭典「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」にTAKAがエントリーされていることを思えば、心のスーパージュニア公式戦とも位置づけられる。

MAOのことだ、宇宙人プランチャ合戦に注目が集まっているとあればそれを上回るインパクトを誇る飛び技を狙っているだろう。その瞬間、後楽園の客席のあちこちで「あいつは宇宙人か!?」と声があがったら、23年前


物語を武器とできる竹下相手に
上野が描くドラマを見たい

5、大阪市立咲くやこの花高等学校同級生対決
竹下幸之介vs上野勇希

竹下は物語を武器にすることができるプロレスラーである。少年ファン時代からDDTを見続け、自らがリングへ上がるようになると先輩たちとの関係性をもとにストーリーテラーのごとくドラマを描いてきた。3・20さいたまスーパーアリーナ大会ではエース・HARASHIMAに対し自分なりのやり方で歴史を表現し、未来へつなげ昇華させた。

若者が現在と未来を描くのは当然として、自身が思い入れを持つ過去までをキッチリと形とし見る者に響かせたのだから、モノが違う。そんな竹下にとって、今回の上野戦は見上げてきた先輩たちではなく下から追いかけてくる者を題材としたドラマツルギーとなる。

それまでプロレスを見ていなかった上野は、同級生がリングに上がるということで応援にいった。初めて見るその世界は、これまで自分が経験してきたあらゆるものより刺激的で、楽しいものに映った。

学校では一緒に昼ご飯を食べてバカ話をする友達が、そんな世界で輝いている。あこがれはあるものの、そこへ踏み込むきっかけがつかめず卒業後もただただウエートトレーニングを繰り返す日々を続けていた。

そんな上野の背中を押したのも竹下だった。人生のターニングポイントには、そういう存在が必ずいる。もしも同じ高校へ入学しなければ、あるいは1年でも学年がズレていたら2人の距離感は別のものになっていて、こういったタイミングも巡ってこなかったかもしれない。

プロ入り後は業界の先輩であり、肉体作りのコーチであり、そしてやっぱり友達の「タケ」が常に上野の前を走っていた。DNA所属であってもDDTの大会ではセコンド業務をおこなうが、必ずといっていいほど竹下の試合ではリングサイドに着いた。

さいたまスーパーアリーナで竹下が勝った直後、アントーニオ本多とトランザム★ヒロシよりも先にリング内へ飛び込んできたのが上野だった。顔をクシャクシャにして喜ぶ姿は、高校時代の2人の情景を想像させた。

2015年6月28日、DDTでKUDO、ヤス・ウラノ、大家健という日大プロレス研究会出身の3人がKO-D無差別級王座を懸けて闘うというシチュエーションが訪れた。大学校舎裏の庭にマットを敷いてやっていたことが、十数年後には後楽園の大観衆を熱狂の渦へと巻き込むという小説のような現実――。

学校で「プロレスはね、見るよりもやる方が面白いんだよ」と何度も聞かされた竹下の言葉は、こういったドラマ性も含めてのものであるのは言うまでもない。そして今回、上野はその小説のような世界へと身を投じることになる。

DDTの最高峰へと君臨し、業界規模の活躍を見せている存在とキャリア7ヵ月弱で対戦できるのは本来ならば飛び級。だが竹下がそうであるように、上野もこの物語を自分の武器とすればいいのだ。

DDT4・29後楽園ではダークマッチながら先輩の下村大樹を破りシングル初勝利をあげた上野は、KAIENTAI DOJOの若手リーグ戦「K-METAL」にエントリーされ、3勝をあげ優勝戦へ進出(5月6日現在)。ここに来て勝ち星が増えてきた。

それによってどうなるような相手ではないが、勝利の喜びを知っているのと知らないのとでは、窮地に陥った時に湧き出る底力が違ってくる。この試合、見たいのは竹下ではなく上野が描くプロレスならではのドラマだ。


サクラバというアリ地獄の中で
もがきながら岩崎は難題に挑む

6、三度目の正直
桜庭和志vs岩崎孝樹

1度目はタッグマッチで直接ギブアップを奪われ、2度目はそこにケンドー・カシンが絡んだため不本意な結末(強引にマシンマスクを被らされ、見間違えたパートナーのマイク・ベイリーがシューティングスター・ダブルニードロップを誤爆し負け)に終わってしまった岩崎。新体制エース宣言をしながら、気がつけばその図式は樋口と勝俣の方へ移り、自身はサクラバというアリ地獄へハマってしまった感がある。

もちろん勝つまで追い続ける前向きな姿勢は大切だが、時間をかけるほどに桜庭の方がノッて来なくなっているのもわかる。岩崎自身の希望や水差しアドバイザーの豊本さんに頼まれて渋々応じているのがあからさまに出ており、それでもいざやったら問題にすることなくしとめているのだから、やられる方としては立つ瀬がない。

会見でも岩崎の方からこの一戦のテーマとして「UWFインターナショナル」とあげたものの「Uインターはもうなくなったので」とバッサリ。まったくピンと来ていない様子だった。ただ、どんな形にせよ桜庭は新体制後の4大会(5・10後楽園を含む)中3大会に出場。まったくの無関心だったら継続して上がっていない。

結局のところは、試合の中で岩崎がピンと来させるしかないのだろう。一刀両断されたUインターというポイントも口にするだけではなく、じっさいに技なり動きなりで桜庭や観客へ伝える必要がある。

そして、そこで終わるのではなくその上で勝つための自分とイコールで結ばれるものを用意する。過去をなぞっただけでは桜庭が通過してきたものにすぎず、それを上回るのは不可能だからだ。

桜庭と向き合うとは、それほどの高いハードルなのだ。だからこそ、今後のDNAの風景を左右する意味でこの一戦はメインに匹敵する大きな意味が内包されている。おそらく後楽園のラインナップで、勝利をあげた時に“値千金感”が高くなるのは岩崎と上野だろう(鈴木大は別枠)。

寝技の達人であり、一時代を築いた桜庭でさえ持ち得ていなくて自分にはあるもの…それを深く掘り下げるとヒントが埋まっているように思う。エース宣言に関するひとつの答えが出される一戦で、岩崎は自らに課した難題をクリアできるか。


自分にとって必要なものを優先
勝俣が盗むべきは鼓太郎の対応力

7、PREMIUM GIG ジュニアのDNA頂きます。
鈴木鼓太郎vs勝俣瞬馬

新体制後の3大会を通じ、もっとも周囲の見方を変えることができたのは勝俣だと言って異論はないはず。4・21新宿FACEでは樋口の壁を破れず、100万円を払ってでも実現させたかったDNA後楽園大会のメインにコマを進められなかったが、そこにはしっかりと現時点における“頂上対決”という空気が現出していた。

最大の目標を達成できなかったにもかかわらず、勝俣は後ろ向きとはならず次にやるべきことのために動いた。鼓太郎との一騎打ちは2月に実現しており、4ヵ月の間に2度目となると新鮮味は望めない。

ましてや後楽園とあればほかに注目度の高いカードを求めることもできたはずなのだが、勝俣は今の自分にとって必要なものを優先した。このあたりの嗅覚は独特である。

確かに新体制一発目で鼓太郎と肌を合わせたことにより勝俣は有形無形のものを手に入れた。3月のタッグマッチで樋口に勝ったのは、それなくしてなし得なかったかもしれない。ただ、プロレスはたった一度対戦しただけでそのすべてを盗めるようなシロモノとは違う。

ましてや鼓太郎はジュニアヘビー級の中でも屈指の職人であり、相手のスタイルやタイプ、その場その場の展開によっていくらでも違ったひきだしを開けることができる。それらすべてを吸収するのは現実的にも不可能だ。

2度目のシングルマッチに当たり勝俣が優先すべきは、何も鼓太郎をラーニングすることではないはず。この先、DNAの中で自分よりも大きなライバルたちの中でトップに立つために必要なスキル…具体的に言うなら対応力だろう。

鼓太郎はプロレスリングNOAHや全日本プロレスの中で、一貫してジュニアとして闘ってきた。ちょうど今の勝俣と同じように、自分よりも大きなヘビー級を相手にした時もどうすれば切り崩せるかを思考し続けた結果、ジュニアだからこそのやり方を体得した。

いわば鼓太郎にぶつかっていく勝俣が、ヘビー級を相手にする鼓太郎と位置づけされる。そしてその先には樋口や岩崎のような自分よりも体格に恵まれた者たちがいる。

後楽園で鼓太郎と向かい合うのは2月の勝俣ではなく、樋口和貞から一本獲った男。そこは相手にする方も意識の中に置いてやるだろう。より慎重かつ強固になったジュニアの先人は、難攻不落を絵に描いたような存在となって立ちはだかる。

その中からジュニアのDNAを盗み獲るべく、勝俣は大勝負に出る。そこで100万円に匹敵する価値があるものを得られれば、メインであってもセミであっても関係ない。

DNAが団体らしくなるための勝負
樋口の思い入れパワーを見極めよ

8、MAIN GIG DNA最強決定戦
マイク・ベイリーvs樋口和貞

2月に新体制となって以来、誰もが現状を変えるべく動き、悩み、それでも前向きに進む中、樋口は初進出の後楽園でメインに立つ。全員から狙われる立場にありながら、一度は勝俣に不覚を喫したもののエースとして評価を下げることなく立つべきステージに立ったのは、もっと評価されてしかるべきだと思う。

その間、DDT4・29後楽園でタッグマッチながらHARASHIMAから3カウントを奪取し、勝利をあげるとともにいつでもどこでも挑戦権を強奪。どのタイミングでKO-D無差別級に挑戦するかという興味を引っ張りつつ今回、DNAとしての後楽園に臨む。

これは相手のベイリーにとっても好都合だろう。勝てばいつどこ権が転がり込んでくる。DNA-GP優勝戦で一度勝っている身としては、単に再戦を組まれたところで“うま味”はない。

しかし、樋口に勝てば今年1月にHARASHIMAへ挑戦して以来の無差別級獲りが巡ってくるのだから、ガ然やる気にも火がついたはず。ベイリーのすごいところは、自分よりも大きな相手でもそれをまったく苦にしていない点。

DNA-GP以外ではDDT3・20さいたまで入江茂弘と一騎打ちで対戦。敗れはしたものの得意の打撃でほんろうするシーンも見せており、パワーや体格で勝らずともシューティングスター・ダブルニードロップを後頭部へ突き刺せばどんなにデカい相手でもしとめることができる絶対的な自信を持っている。

事実、グランプリ優勝戦ではそれで樋口を捕獲。所属ではなくとも一番の実績をあげた人間がもっともいい位置を取るのは当然であり、その意味では誰よりもベイリーがDNAという場を有効に活用してきたことになる。

今回の後楽園メインについても、団体そのものに対する思い入れより自分自身をアップさせるための舞台との認識が強いはず。その分、ベイリーの方が感情に左右されることなく樋口を倒すことのみに集中できる。

勝負に徹するのであれば、その方が正しい。でも我々はプロレスの中で、思い入れがとてつもないパワーになることを何度も見てきた。DNA-GPは完全なる個人闘争の場でありその結果、樋口はベイリーに勝てなかった。

今回はDNAのエースとして、あのリーグ戦で所属選手が優勝できなかったことや団体として初の後楽園というシチュエーションが、己を突き動かす原動力たり得る。新体制後、確かに演出やコスチュームチェンジ、何よりも選手それぞれの意識の変化によって、DNAはDDTから独立した一つの団体らしくはなってきた。

しかしながら、それが完全に浸透するまでには至っていない。それはまだ、誰もDNAそのものを体現する男がいないからだ。

個々の野望や主張は見えても、DNAならではの明確なカラーや形は現時点でそれぞれの解釈の範ちゅうを出ていない。プロレスリングBASARAの木高イサミも、ガンバレ☆プロレスの大家健も団体をけん引する立場にある者は他のメンバー以上に団体愛が深い。それは情念と表現しても差し支えないほどのものだ。

樋口が後楽園のメインで体現するDNA愛。それが情念のように燃え滾るものとして伝われば、この団体は周囲の見方を変えることでまた一歩先へ進むことができる。5・10後楽園に足を運ぶ皆さんには、勝敗とともにその思い入れの深さを見極めていただきたい。

SNS